こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
「老後資金を3,000万円貯めたから安心」と考えても、実際に退職後の生活を始めると意外な不安に直面することがあります。
今回はJさん(60代・退職直前)のケースをもとに、老後資金を取り崩す際の心理的・実務的なポイントを整理してみましょう。
Jさんの状況
- 年齢:60歳
- 貯蓄:老後資金3,000万円(預金・投資信託・年金以外の自己資金)
- 退職後の生活費:年間250万円(年金で120万円、自己資金で130万円を補填)
- 退職金はほぼ生活費に充当済み
Jさんは、長年コツコツと積み立ててきた資産をもとに、「十分な老後資金がある」と安心していました。
取り崩しに直面した不安
① 資金の減り方が心理的負担に
退職後、毎年130万円を取り崩す中で、資産残高が減っていくのを見ると不安が増大。
「もし大きな出費があったらどうしよう」と常に頭をよぎるようになりました。
② 市場変動リスク
投資信託や株式を保有していたため、株価下落のタイミングで取り崩すことに心理的抵抗が生じました。
「資産はあるのに、使うタイミングで減るかもしれない」というジレンマです。
③ 生活費の増加や予想外支出
医療費や介護費用など、想定外の支出が発生する可能性もあり、計画通りに取り崩せないリスクが常にあります。
Jさんが実践した解決策
① 引き出しルールを設定
毎月・毎年の取り崩し額をあらかじめ設定し、心理的負担を軽減しました。
② 安全資産と運用資産を分ける
生活費は現金や定期預金など安全資産に確保し、投資資産は余裕資金として運用。
株価変動の影響を受けにくくしました。
③ 取り崩しシミュレーションを実施
資産寿命の試算を行い、「何歳まで取り崩せるか」を把握。
無理のない範囲で資産を使う計画を立てました。
老後資金は貯めるだけでは安心できない
Jさんのケースから分かるのは、老後資金は貯めるだけでなく、取り崩し計画まで整えて初めて安心できるということです。
数字上は十分でも、使い方や心理的負担を考慮した設計が不可欠です。
最後に
老後資金を作ることは大事ですが、取り崩すときの不安を減らす工夫も同じくらい大切です。
安全資産の確保、取り崩しルールの設定、シミュレーションを行うことで、安心して老後を過ごせるようになります。
それでは今回はこの辺で。