こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
住宅ローンを抱えながら資産形成をしていく。これは多くの家庭が直面するテーマです。
「繰上返済を急ぐべきか?」 「投資に回したほうが効率的か?」と迷う方も多いでしょう。どちらも正解になり得ますが、状況や考え方によって最適バランスは変わってきます。今日はその考え方の軸を整理してみたいと思います。
住宅ローン返済 vs. 資産形成 —— どちらを優先すべきか?
住宅ローンの返済は「確実な利回り」を得ているのと同じ意味を持ちます。
たとえば金利1.2%のローンを繰上返済すれば、手元の資金を「年1.2%で運用した」のと同等の効果があります。しかもリスクゼロです。
一方で、投資信託や株式などを活用すれば、長期的には年3〜5%程度のリターンが期待できます。つまり「返済は安全だけどリターンは小さい」 「投資はリターンは大きいけどリスクもある」というトレードオフになるのです。
バランスを取るための3つの視点
では、返済と投資の最適バランスはどう考えればいいのでしょうか?
私は次の3つの視点を重視しています。
① 生活防衛資金の確保
返済や投資に回す前に、まず「半年〜1年分の生活費」を現金で確保しておくことが大前提です。
予期せぬ収入減や支出増に備え、余裕資金をもたないまま返済や投資を進めるのは危険です。
② ローン金利と投資期待利回りの比較
ローン金利が2%以上と高い場合は、繰上返済のメリットが大きくなります。逆に1%前後の低金利であれば、投資を優先してもよいでしょう。
「金利<投資リターンが見込めるなら投資に比重」 「金利>投資リターンなら返済を優先」と考えるのが基本です。
③ 人生設計との整合性
住宅ローンは長期戦。老後資金や教育資金とどう両立させるかを考えることが重要です。
子どもの大学進学資金が必要な時期に返済を優先しすぎて資産形成が進んでいなければ、結果的に借入に頼らざるを得なくなる可能性もあります。ライフプランの中で「返済ペース」と「資産形成ペース」を調整していく必要があるのです。
実践的なバランスの取り方
私が相談を受けたケースでは、以下のようなアプローチを推奨しています。
- ローン金利が1%台前半 → 返済は最小限、資産形成を優先
- ローン金利が2%以上 → 一部繰上返済しつつ、投資も少額続ける
- ボーナス → 半分を返済、半分を投資へ(偏らないバランスを保つ)
このように「一方に全振り」するのではなく、両方を組み合わせるのが安心感と効率を両立させる鍵になります。
最後に
住宅ローンと資産形成の両立は、「数字の損得」だけでは決められません。
安心を優先したいのか、将来の資産拡大を優先したいのか。価値観によって最適解は変わります。大事なのは、自分と家族にとっての心地よいバランスを見つけることです。