こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
今日は、私が家計相談の現場で出会ったあるご夫婦の話をご紹介します。
数字や表だけでは見えにくい「心の不安」と向き合うことが、いかに家計改善につながるのか。まさに「現場」だからこそ実感できたケースでした。
「なんとなく貯まらない」——夫婦の共通ワード
ご相談に来られたのは30代の共働き夫婦。
収入は決して低くありません。
毎月の支出も極端に多いわけではないのに、年末になると「思ったほど貯まっていない」と感じてしまう。
お二人の口から繰り返し出てきたのは「なんとなく不安」 「なんとなく貯まらない」という言葉でした。
家計簿より先にやったこと
私はまず、詳細な家計簿チェックよりも「安心できる言葉探し」から始めました。
具体的には、次の質問を投げかけたのです。
- 貯金がいくらあれば“安心”できますか?
- どんな支出は「喜んで払える」と思いますか?
- 将来のお金で、一番心配なのは何ですか?
すると、奥さまは「教育費がぼんやり不安」、ご主人は「老後の年金が信用できない」と言葉にしてくれました。
この瞬間、ただの“漠然とした不安”が、“解決すべき課題”へと変わったのです。
小さな仕組みで大きな安心
次に取り組んだのは、シンプルな仕組みづくりです。
- 児童手当をそのまま教育費口座へ自動振替
- 老後用のiDeCoを少額からスタート
- 生活費口座と「楽しみ支出」口座を分ける
この3つを導入するだけで、お二人の表情は一気に和らぎました。
「漠然とした不安」が「行動で対処できる課題」に変わったからです。
最後に
家計改善の現場では、必ずしも“数字の計算”から入る必要はありません。
むしろ「言葉にならない不安」を掘り出し、それに名前をつけることがスタートラインになることが多いのです。
そして仕組みは大掛かりでなくてもいい。
自動振替ひとつ、口座を分けるひと工夫だけでも、人は驚くほど安心できる。
それが、私が日々「家計の現場」で学び続けている実感です。