【マネー講座】 「夢のマイホーム」を手放した理由

2025年8月15日

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芹沢慎一

こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。

今日は、私が出会ったBさん(40代男性会社員)のケースをご紹介します。
「住宅ローンの仮審査に通った」という喜びの瞬間から、まさかの“借りない選択”に至るまでの物語です。

「これで家が買える!」…はずだった

Bさんは都内で家族4人暮らし。
築30年の賃貸マンションで暮らしていましたが、子どもたちの成長とともに部屋の狭さが気になり始めました。

ある日、駅近で理想的な戸建てを発見。
不動産会社に勧められ、その日のうちに住宅ローンの仮審査を申し込みます。

結果は翌日――「承認」
Bさん夫妻は「これで家が買える!」と大喜びしました。

未来の家計表で見えた現実

契約前に、Bさんは私の住宅資金セミナーに参加。
私はお決まりの質問を投げかけました。

「このローン、未来のあなたは笑顔で払っていますか?」

その場でBさんの家計を5年・10年先までシミュレーションしてみました。
教育費のピーク、車の買い替え、親の介護、そして想定外の医療費…。
シミュレーションの結果、10年後の貯蓄残高はほぼゼロ

Bさんは苦笑いしながらも、紙に書かれた数字をじっと見つめていました。

決断の日

数日後、不動産会社から「契約どうされますか?」と連絡が入りました。
Bさんは深呼吸して答えました。

「今回は見送ります。今の生活と将来のゆとりを守りたいので。」

担当者は少し驚いたようでしたが、Bさんの決意は揺るぎませんでした。
仮審査が通ったことと、借りるべきかは別問題だ――そう実感した瞬間だったのです。

「借りられる額」と「払える額」は違う

このケースから分かるのは、金融機関が提示する借入可能額は、必ずしも自分の幸せ予算ではないということ。

仮審査は「あなたはこれだけ借りられますよ」というお墨付きにすぎません。
未来の生活の中で、それを無理なく払えるかどうかは、まったく別の計算式です。

最後に

Bさんは今も賃貸暮らしですが、「あの時借りなかったおかげで、子どもの留学資金も余裕で準備できそうです」と笑っています。

住宅も、車も、教育ローンも――
借りる前には、必ず“未来の自分”を会議室に呼びましょう。
そしてこう尋ねてください。

「この借金、未来の私にとってご褒美ですか? それとも足かせですか?」

その答えが、あなたの家計を守る最大のセキュリティになります。

今日の話が、あなたの“お金の地図”に小さな道しるべを立てられたなら幸いです。