【契約書の山を整理して、眠っていたリスクをあぶり出す】契約管理強化プロジェクトの舞台裏

2025年8月15日

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芹沢慎一

こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。

今回は、私が支援した契約管理体制の立て直しについてお話しします。
舞台は、首都圏近郊でITサービスを展開する中小企業。
社員数は40名、取引先は自治体から個人事業主まで幅広い会社でした。

「契約書はどこに?」から始まった

社長との初回ミーティングで飛び出した一言。

「契約書は…ええと、営業部の棚か、経理の金庫か、あ、去年までは総務が…」

つまり、契約書の保管場所がバラバラ
期限管理も属人的で、担当者が退職すると、その契約の存在自体が分からなくなるケースも。

私はすぐに危険信号を感じました。
契約の更新忘れや、古い条件のまま続いている契約は、利益を削り、法的トラブルの火種になるからです。

着手したのは「全件棚卸し」

まず、会社中の引き出しや倉庫、PC内フォルダをひっくり返し、契約書の原本と電子データを全部洗い出しました。

件数は想定の倍、340件
中には10年前の契約で、既に相手先が存在しないものや、解約通知が出されていない契約も。

一覧にしてみると、更新期限が近い契約が赤字で浮かび上がり、経営陣は顔を見合わせました。

新ルールは「一本化と見える化」

私が提案したのは、以下の3つ。

  1. 契約書の保管は総務一本化
    紙も電子も、窓口を統一して紛失を防ぐ。
  2. 契約期限アラートの導入
    期限90日前に総務と担当部署に自動通知。
  3. 条件更新時は必ず経営会議で承認
    “ついで更新”を防ぎ、利益条件を守る。

現場の意識が変わった瞬間

最初は「また手間が増える」とぼやいていた営業部も、半年後にはこんな反応に変わりました。

「期限切れに気づかず損してた契約、なくなりました」
「更新時に条件交渉できるようになったのは大きい」

数字で見ると、更新交渉によって粗利が年300万円改善
“契約を守る”ことが、利益を増やすことだと実感してもらえたのです。

最後に

契約書は、会社と取引先をつなぐ命綱。
ほこりをかぶったままでは、いざという時に役に立ちません。

整理し、期限を管理することで、会社は思わぬリスクから解放されます。
このプロジェクトが完了した日の帰り道、社長がぽつりと言いました。

「これで夜ぐっすり眠れるよ」

外は小雨でしたが、その言葉が妙に温かく響き、駅までの道のりがやけに短く感じられました。

それではまた次回。あなたの明日の選択が、今日より少し賢くなりますように。