【事例紹介】 「大型契約の解約危機」“逃げ道”を残した交渉術

2025年8月15日

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芹沢慎一

こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。

ある日、東京のITサービス企業から、かなり緊迫した声で電話が入りました。
「売上の3割を占める大口顧客が契約更新しないと言ってきたんです…」

業界特有の構造として、ITサービスは固定費が高く、一社の売上依存度が大きいほど資金繰りへのインパクトが大きくなります。
この会社も例外ではなく、もし契約を失えば、翌月から赤字に転落する見込みでした。

本当の理由を探る

まず私が行ったのは、顧客側の決裁者と直接話すこと。
表向きの理由は「サービス品質改善の要望」でしたが、
突っ込んで聞くと、最大の理由は予算削減だと判明しました。

つまり「嫌になった」のではなく、「お金が足りない」。
ここに解約阻止の糸口があります。

契約条件を“縮める”という提案

私は、現行のフルサービスプランから、
必要最低限に絞ったライトプランへの切り替え案を作成。

  • サーバー保守回数を月2回から1回へ
  • カスタマーサポートの対応時間を縮小
  • 高度な分析レポートをオプション化

これにより、顧客の年間コストは約30%減。
一方で、契約自体は維持され、固定費の一部をカバーできる形になりました。

契約継続がもたらす副作用

契約は縮小されましたが、顧客との関係は継続。
その後、半年も経たないうちに顧客の業績が回復し、
「やっぱりフルサービスに戻したい」という連絡が入りました。

顧客は、一度手放したサービスを再導入する際に、新しい競合と比較する必要がなく、
スムーズに復帰できたのです。
これも“逃げ道を残した契約条件”の効果でした。

最後に

IT業界は変化のスピードが早く、顧客の予算も情勢に左右されやすい。
契約は“ゼロか100か”ではなく、中間の選択肢を持たせることが、関係維持と資金安定のカギになります。

今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
次回も「なるほど」と思える金融話をお届けします。