こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
今回は、私がシンガポール駐在時に手がけた、ある日系企業の海外子会社支援の話です。
「資金ショートまで残り1か月」
きっかけは、現地法人の日本人マネージャーからの一本の電話。
「資金繰りが厳しくて、このままだと給与が払えないかもしれない」
理由を聞くと、現地通貨の急激な下落により、予定していた日本本社からの送金額が足りなくなっていました。
しかも、現地銀行の与信枠は既に限界。追加融資は見込めません。
最初にやったこと──「数字の全裸化」
私はまず、直近3か月の入出金予定を分単位で洗い出しました。
「どの日に、いくら出ていくか」 「確実に入ってくるのはいつか」
まるで冷蔵庫の中身を一品ずつ出して並べるように、資金の動きを見える化したのです。
すると、ある事実が浮かび上がりました。
在庫の中に“ほぼ売約済み”なのに倉庫に眠っている商品が数百万円分あったのです。
打った手──「資産は現金化してこそ命」
私はすぐに営業チームに掛け合い、買い手に前払いを依頼。
「多少のディスカウントをしても、現金を先にもらうほうが命綱になる」と説得しました。
同時に、日本本社へ為替予約(Forward契約)の緊急導入を提案。
これで、送金時に為替変動の影響を最小限に抑えられます。
さらに、現地銀行に対しては、短期の手形割引を交渉。
これも「既に契約済みの売掛金がある」という事実が、交渉材料になりました。
結果──「3週間で息継ぎ可能な状態へ」
これらの施策により、資金ショートの危機はひとまず回避。
給与も滞りなく支払い、現地スタッフの不安を最小限に抑えることができました。
後日、日本本社の財務部長からこんなメッセージをいただきました。
「慎一さん、現場の安心感って数字以上の価値があるんですね」
最後に
海外事業では、為替・商習慣・銀行対応――あらゆる要素が日本と違います。
資金繰りは「足元の安全」と「先の見通し」の両方を押さえることが大切です。
あの時のシンガポールの空は、容赦ない日差しで照りつけていましたが、
危機を乗り越えたスタッフの笑顔は、それ以上に明るかったことを、今もはっきり覚えています。
それでは、今日はこの返で。
#慎一のマネー講座 でまたお会いしましょう!