こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
今日は、私が購買・調達担当向けの与信管理研修で遭遇した、“危機一髪”のエピソードをご紹介します。
長年の取引先に異変?
舞台は地方の食品加工メーカー。
購買部の山本さん(仮名)は、研修中もどこか落ち着きません。
休憩中に話しかけると、こう切り出しました。
「実は、来月の大型受注分で主要仕入先から材料を確保する予定なんですが……最近、納期の回答が妙に遅くて」
その仕入先とは10年以上の付き合いがあり、これまでは信頼して取引をしてきた相手。
「気のせいだ」と流すこともできたのですが、山本さんは不安を拭えずにいました。
20分の“簡易財務チェック”
そこで、研修中のグループワークを実践の場に切り替え、仕入先の状況を確認。
- 商業登記で確認 → 最近、代表者が交代している
- 官報情報 → 債権者会議の告知が過去に掲載
- 業界紙の記事 → 取引銀行との関係悪化を示す記述
- 最近の納品データ → 小口発注の納期遅延が増加
他の参加者からも、
「同じ業界で、似たケースがあった時、その会社は半年以内に破産申請しました」
というリアルな声が上がりました。
山本さんの表情が引き締まります。
取引条件を変更し、供給を守る
翌日、山本さんは社内で緊急ミーティングを開催。
- 該当仕入先の発注量を縮小
- 他社からの代替調達ルートを確保
- 在庫を1.5倍に積み増し
結果、その3か月後に仕入先は実際に民事再生法の適用を申請。
山本さんの会社は、材料不足に陥ることなく生産を継続できました。
「あの時の情報収集と判断がなければ、工場ラインが止まっていました」
教訓:仕入先は“取引年数”で安心しない
長い付き合いでも、相手企業の経営状況は常に変化します。
特に主要仕入先は、定期的な財務状況のモニタリングと代替ルートの確保が欠かせません。
倒産リスクは、納期遅延や担当者交代といった“小さな異変”から顔を出します。
最後に
仕入先リスクの管理は、営業や経理だけでなく、購買部門の重要な役割です。
「異変を感じたら、すぐに調べ、すぐに動く」——このシンプルな行動が、企業の生命線を守ります。
与信管理は“攻め”ではなく“守り”のための道具。
そして守るべきは、契約やお金だけでなく、会社全体の供給力なのです。
それでは、また次回お会いしましょう!