【納品直前、請求条件を変えた理由】延滞リスクを回避した営業部の判断

2025年8月14日

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芹沢慎一

こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。

今日は、私が国内企業向け与信管理セミナーで出会った、ギリギリの判断が功を奏した事例をご紹介します。

その発注、本当にその条件で大丈夫?

舞台は、首都圏で精密部品を製造する中小メーカー。
セミナー会場は工場の会議室、背後では機械の稼働音が響いています。

営業課長の高橋さん(仮名)が、セミナー途中で落ち着かない様子。
休憩時間に、そっと話しかけてきました。

「実は、明日納品予定の新規取引先があるんですが……初回なのに掛け(後払い)でいいのか、不安になってきまして」

納品はもうトラックの手配も済んでいる状態。
私は「それなら、この時間を使って簡易チェックをしてみましょう」と提案しました。

10分でできる“延滞リスク診断”

まずは取引先の商業登記と官報情報を検索。
次に、過去の業界ニュースや取引先評判サイトを確認。

  • 「登記上は資本金は大きいけど、事務所が最近移転してる…」
  • 「数年前に役員が一新されている」
  • 「ネット上に未払いトラブルの書き込みが…」

その時、経理部のベテラン社員がひと言。

「あの会社、以前うちの下請けさんにも支払い遅延してましたよ」

空気が一気に引き締まりました。

条件を変えてリスクを減らす

高橋さんは、急きょ納品前に取引条件を変更。

  • 初回取引は前金50%
  • 残額は納品後30日以内に支払い
  • 延滞時の利息条項を契約書に明記

相手企業は渋い表情を見せたものの、最終的に条件を受け入れました。

「条件を明確にしたら、むしろ“ちゃんとした会社”って印象を持たれたみたいです」

信用は“攻め”より“守り”から

この一件で社内全員が学びました。
与信管理は後手に回るほどリスクが増える。
初回取引こそ条件をきちんと設定し、リスクを最小限にすることが重要だということです。

最後に

国内取引でも、延滞や未払いのリスクは決して珍しくありません。
納品直前であっても、情報を集めて条件を見直す勇気が、会社を守ります。
与信管理は「経理部の専任作業」ではなく、営業・経理・現場が一体となって行う防衛策。
それが結果的に、取引先との信頼を長く続けるための礎になるのです。

ではまた次回。 #慎一のマネー講座 でもお会いしましょう!