こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
今日は、私が国内企業向け与信管理セミナーで出会った、ギリギリの判断が功を奏した事例をご紹介します。
その発注、本当にその条件で大丈夫?
舞台は、首都圏で精密部品を製造する中小メーカー。
セミナー会場は工場の会議室、背後では機械の稼働音が響いています。
営業課長の高橋さん(仮名)が、セミナー途中で落ち着かない様子。
休憩時間に、そっと話しかけてきました。
「実は、明日納品予定の新規取引先があるんですが……初回なのに掛け(後払い)でいいのか、不安になってきまして」
納品はもうトラックの手配も済んでいる状態。
私は「それなら、この時間を使って簡易チェックをしてみましょう」と提案しました。
10分でできる“延滞リスク診断”
まずは取引先の商業登記と官報情報を検索。
次に、過去の業界ニュースや取引先評判サイトを確認。
- 「登記上は資本金は大きいけど、事務所が最近移転してる…」
- 「数年前に役員が一新されている」
- 「ネット上に未払いトラブルの書き込みが…」
その時、経理部のベテラン社員がひと言。
「あの会社、以前うちの下請けさんにも支払い遅延してましたよ」
空気が一気に引き締まりました。
条件を変えてリスクを減らす
高橋さんは、急きょ納品前に取引条件を変更。
- 初回取引は前金50%
- 残額は納品後30日以内に支払い
- 延滞時の利息条項を契約書に明記
相手企業は渋い表情を見せたものの、最終的に条件を受け入れました。
「条件を明確にしたら、むしろ“ちゃんとした会社”って印象を持たれたみたいです」
信用は“攻め”より“守り”から
この一件で社内全員が学びました。
与信管理は後手に回るほどリスクが増える。
初回取引こそ条件をきちんと設定し、リスクを最小限にすることが重要だということです。
最後に
国内取引でも、延滞や未払いのリスクは決して珍しくありません。
納品直前であっても、情報を集めて条件を見直す勇気が、会社を守ります。
与信管理は「経理部の専任作業」ではなく、営業・経理・現場が一体となって行う防衛策。
それが結果的に、取引先との信頼を長く続けるための礎になるのです。
ではまた次回。 #慎一のマネー講座 でもお会いしましょう!