こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
今日は、私が海外取引セミナーで遭遇した“冷や汗もの”の瞬間をご紹介します。
テーマは、契約書よりも先にやるべきこと——そう、与信管理です。
契約は、コンテナに荷物を積む前に
会場は都内の商社ビルの一室。
参加者は、アジアとの取引を伸ばしたい中堅メーカーの営業や貿易担当者。
その中に、ベテラン営業の田中さん(仮名)がいました。
休憩時間、田中さんが私のところにやって来て、低い声で切り出しました。
「実は、明日の船で新規の取引先向けに商品を出す予定なんですが……正直、相手の会社がまだよくわからなくて」
出荷まで、あと24時間。
私は「じゃあ今から15分でできる海外信用チェックをやってみましょう」と提案しました。
15分間の“即席海外与信”
田中さんとノートPCを開き、まず相手企業の公式サイトを確認。
次に、海外の商業登記や現地ニュース記事、取引先レビューをチェックします。
- 「あれ?会社設立が思ったより最近だな」
- 「住所がシェアオフィス?倉庫の記載がない…」
- 「現地ニュースに、前経営者が別会社で訴訟を起こされた記事が…」
さらに、為替リスクや輸送保険の条件を確認。
その間、田中さんの表情がだんだん固くなっていきました。
浮かび上がった“赤信号”
経理担当の女性社員が横から一言。
「この国って、輸入規制が変わったばかりじゃないですか?税関で止まる可能性もありますよね」
その瞬間、全員の目が覚めたように動き出しました。
調べると、確かに一部の製品が輸入許可制になっており、相手企業はまだ輸入ライセンスを取得していないことが判明。
田中さんは深呼吸をひとつ。
「……危なかった。もし積んでたら、港で全部止まってたかも」
条件を変えて契約を守る
翌日、田中さんは急きょ契約条件を変更。
- 船積みはライセンス取得後に延期
- 前金50%入金確認後に出荷
- 輸送保険を義務化
相手側は最初こそ渋ったものの、最終的に条件を受け入れました。
その後、ライセンス取得を経て、無事に取引が開始されたそうです。
「あの15分がなかったら、半年分の売上が港で眠るところでした」
教訓:海外取引こそ“守りの与信”を
この出来事で、参加者全員が再認識しました。
与信管理は、国内よりも海外の方がはるかに重要。
距離も文化も法律も違う相手だからこそ、条件を明確にし、守りを固める必要があります。
数字だけでなく、法律・物流・文化——あらゆる角度から相手を知る。
それが、現場で会社を守る与信管理の本質です。
最後に
海外取引では、契約や出荷の直前になってから信用調査をするのでは遅すぎます。
相手企業の財務や経営者の経歴、法的規制、物流条件まで——情報は多角的に集め、条件交渉に反映させることが必要です。
与信管理は、経理部だけの仕事でも、営業の足かせでもありません。
「会社を守る武器」として、現場で使いこなすことこそ、長期的な信頼関係と利益を生む近道です。
私は、こうした“生きた現場の知恵”をセミナーや記事でお届けしています。 #慎一のマネー講座 もぜひご覧ください!