【海外取引の資金繰り】見えない落とし穴とその回避術

2025年8月14日

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芹沢慎一

こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。

国内取引と同じ感覚で海外とビジネスを始めた途端、
「えっ、まだお金が入ってこない…?」
「入金額が契約より少ないんだけど?」
と青ざめた経験、ありませんか?

海外取引は利益の幅も大きい反面、資金繰りの落とし穴も深い。
今日は、現場で実際に見た“海外資金繰りリスク”を一覧化し、その回避術をご紹介します。

1. 為替変動——黒字が一夜で赤字に変わる

あるメーカーは、米ドルで商品を売り、日本円で材料を仕入れていました。
契約時には1ドル=110円で黒字計算。しかし納品から入金までの4か月の間に円高が進み、実際に入金されたときには利益が半減。

回避策:通貨マッチング(入金通貨と同じ通貨で仕入れる)、為替予約、自然ヘッジを活用。

2. 長期回収サイト——120日待ちの現金

海外では90日〜120日の支払サイトが珍しくありません。
売上は伸びても現金はなかなか入らず、仕入先への支払いだけが先行して資金繰りが苦しくなります。

回避策:契約時にサイト短縮交渉、LC(信用状)やDP(書類渡し)決済を検討。

3. 送金遅延——「銀行の週末」は国によって違う

インドネシアの取引先が金曜に送金手続きをしても、実際に日本の口座に反映されたのは翌週木曜。
国や銀行によっては送金に1週間以上かかります。

回避策:回収日数に余裕を持たせ、複数銀行ルートを確保。

4. 送金規制——政府承認待ちで資金が止まる

ある新興国では、外貨送金に政府の事前承認が必要。
書類不備で承認が遅れ、入金が2か月遅延するケースも。

回避策:契約前に現地法務・銀行に確認し、必要書類や承認手続きを把握。

5. 手数料負担——“気づかぬうちの目減り”

送金時に中継銀行が関わる場合、複数回の手数料差し引きが発生。
「予定より500ドル少ない…」ということが現実に起こります。

回避策:契約で手数料負担者を明確化(BEN/SHA/OUR条件)、入金額と手数料を突合。

6. 信用リスク——海の向こうで倒産

与信調査を怠り、大口先が突然の経営破綻。回収不能額が数千万円にのぼるケースも。

回避策:事前の与信調査、貿易保険や信用保証の活用。

最後に

海外取引の資金繰りは、「通貨」 「距離」 「文化」の3つの壁を超えるゲームのようなものです。
ルールを知らずに挑めば、利益が出ていても資金ショートする“黒字倒産”のリスクがあります。

逆に、為替リスクを管理し、回収条件を整え、送金のクセを把握すれば、資金繰りはむしろ国内より安定します。

資金繰り表は、単なる経理の帳簿ではなく、海外ビジネスの羅針盤です。
航海の前に、その海図をしっかり描き込みましょう。

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