【事例紹介】 「資金繰り改善プロジェクト」“入ってくるお金”と“出ていくお金”のズレを埋めた4か月

2025年8月14日

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芹沢慎一

こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。

今回は、私が地方の中堅食品メーカーでお手伝いした「資金繰り改善」の裏側をお話しします。

「売れているのに、なぜかお金が足りない…」

きっかけは、決算が黒字なのに常に借入金の残高が膨らんでいる——そんな相談でした。
売上は過去最高を記録しているのに、資金繰り表はいつも火の車。

詳しく話を聞くと、

  • 売掛金回収サイト:90日
  • 仕入れ支払いサイト:30日
    という大きなズレが。

売上が伸びるほど、先に支払う現金も増え、まるで給水ポンプを全開にしてもタンクが空っぽのまま…そんな状態でした。

最初にやったこと——「現金の流れを地図にする」

私はまず、過去6か月分の入出金を日単位で可視化しました。
すると、月末の支払い集中日には現預金が底をつき、そこから資金ショートを避けるために短期借入を繰り返していることが判明。

また、売掛金の大口先3社の入金遅延が慢性化しており、金額にして毎月数千万円が“宙ぶらりん”状態でした。

導入した3つの改善策

  1. 回収条件の交渉:主要取引先と支払い条件を見直し、サイトを最大15日短縮
  2. 在庫回転率の改善:売れ筋と滞留品を分け、在庫日数を平均45日から30日に短縮
  3. 資金繰りカレンダーの共有:営業・経理・購買が同じ資金繰り表を見ながら仕入れ量と販促計画を調整

特に効果があったのは、営業担当が「契約時から入金条件を意識する」ようになったこと。
それまで“売上だけを追う”営業スタイルが、“利益と現金の両立”へと変わっていきました。

現場の変化——「数字が会話のきっかけになる」

導入から4か月後、短期借入の残高は前年同月比で35%減少。
月末の“資金繰り会議”は、以前のような重苦しい空気ではなく、
「来月の販促は資金的に余裕あり」
「この取引先、条件もう少し詰められそうだね」
と、前向きな話題が増えました。

経理部長が笑いながらこう言ったのを覚えています。
「やっと“借金するための会議”じゃなくなりましたよ」

最後に

資金繰りは、会社の血流のようなものです。
止まれば、黒字でも倒れてしまう。

今回の改善は単なるテクニックではなく、
「お金の流れを全員で意識する文化」を根づかせることが一番の成果でした。

プロジェクト最終日、社長がふと漏らした一言があります。
「これで夜眠れるようになったよ」
その笑顔を見た瞬間、この仕事をやっていて良かったと心から思いました。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

それではまた次回! #慎一のマネー講座 もよろしくお願いします。