こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
昨今の為替相場は、まるで天気のように予測が難しい状況が続いています。
特に輸出入を行う企業にとって、為替の変動は利益を一瞬で吹き飛ばすリスクになり得ます。
今日は、私が支援した 製造業A社 の事例を通じて、中小企業が現実的にできる為替リスク対策をお話しします。
円安で利益が消えた瞬間
A社は欧州向けに精密部品を輸出している社員50名ほどのメーカー。
取引のほとんどがユーロ建てで、契約時点では為替は1ユーロ=135円前後でした。
しかし納品・決済のタイミングでは1ユーロ=145円台に円安が進行。
「円安なら輸出は有利じゃないの?」と思われるかもしれませんが、A社の場合は原材料をドル建てで輸入していたため、仕入れコストが大幅増。
結果、利益は予定の半分に。
為替リスク対策の3つの視点
1. 自然ヘッジを活用する
輸出と輸入の通貨をそろえることで、為替変動の影響を相殺する方法です。
A社では原材料の一部をユーロ建てで調達する契約に切り替え、輸出入の通貨を合わせることで変動リスクを軽減しました。
2. 為替予約(フォワード契約)
銀行や商社を通じて、将来の決済レートをあらかじめ固定する方法。
相場変動による利益のブレを防げますが、レートが有利に動いた場合の利益は享受できません。
A社では主要取引額の7割を為替予約で固定し、残り3割を市場動向に応じて対応する“ハイブリッド型”を採用しました。
3. 複数通貨での取引条件交渉
主要取引先と、日本円や他通貨での決済条件を事前に交渉しておくことも有効です。
為替変動が大きい時期には、交渉カードとしての価値が高まります。
A社の成果
対策を講じた翌年度、A社では為替変動による利益のブレが前年比60%減少。
経営会議では「為替相場を予想するゲームから、コントロールするゲームへ変わった」と表現されました。
最後に
為替リスクは、天気予報のように「完璧な予測」はできません。
しかし、
- 自然ヘッジ
- 為替予約
- 取引条件交渉
という3つの傘を持っておけば、突然の“相場の雨”にも対応できます。
為替の波は避けられませんが、サーフボード(対策)さえあれば、むしろその波を利用して進むこともできるのです。
それではこの辺で。また次回お会いしましょう!