こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
経営において「売上を伸ばす」ことは誰もが目指しますが、忘れてはならないのが「売掛金を守る」ことです。
どれだけ売上が好調でも、回収できなければ“幻の利益”になります。
今日は、私が以前サポートした 製造業A社の与信管理改善事例 をもとに、取引リスクを下げるポイントをお話します。
ある日突然の「未回収」
A社は、部品製造を行う中堅メーカー。
長年の得意先B社から大口注文が入り、社内は活気づいていました。
しかし納品から3か月後——B社は資金繰り悪化で支払い不能に。
未回収額は数千万円。
経営陣は「これほど長く付き合ってきた会社なのに…」と衝撃を受けました。
原因は、ここ数年の与信チェックが形式的な年1回の信用調査だけだったこと。
B社の業績悪化は半年以上前から兆候があったのです。
与信管理のポイント
- 定期的な信用調査だけでは足りない
四半期ごとに売掛残高の大きい取引先を重点モニタリング。
業界ニュース・帝国データバンクや東京商工リサーチの速報も随時チェック。 - 社内情報の活用
営業担当が感じた「注文ペースの変化」 「担当者の交代」 「支払い条件変更の提案」など、現場の“生の情報”は財務データ以上に重要です。 - 取引条件の見直し
兆候があれば、納品サイクル短縮・前金比率引き上げ・保証付取引などでリスクを分散。
A社が行った改善策
B社との取引損失後、A社は次の3点を導入しました。
- 月次の取引先格付けレビュー
- 営業部と経理部の情報共有会議を月1回開催
- 「要注意先リスト」の作成と取引条件の自動見直しルール
この仕組み導入から1年、A社は複数の潜在的リスク案件を早期に発見し、未回収ゼロを維持しています。
最後に
企業間取引は信頼が土台ですが、信頼と与信は別物です。
天気予報を見ずに遠出をする人はいないように、取引の“天気”を読むことは経営の必須スキル。
「売上の裏に、確実な回収あり」
これを合言葉に、ぜひ貴社でも与信管理の精度を高めてみてください。
ではまた次回お会いしましょう!