【取引先の“晴れ”と“雨”を読む】与信管理の実務知恵

2025年8月14日

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芹沢慎一

こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。

経営において「売上を伸ばす」ことは誰もが目指しますが、忘れてはならないのが「売掛金を守る」ことです。
どれだけ売上が好調でも、回収できなければ“幻の利益”になります。

今日は、私が以前サポートした 製造業A社の与信管理改善事例 をもとに、取引リスクを下げるポイントをお話します。

ある日突然の「未回収」

A社は、部品製造を行う中堅メーカー。
長年の得意先B社から大口注文が入り、社内は活気づいていました。
しかし納品から3か月後——B社は資金繰り悪化で支払い不能に。
未回収額は数千万円。

経営陣は「これほど長く付き合ってきた会社なのに…」と衝撃を受けました。
原因は、ここ数年の与信チェックが形式的な年1回の信用調査だけだったこと。
B社の業績悪化は半年以上前から兆候があったのです。

与信管理のポイント

  1. 定期的な信用調査だけでは足りない
    四半期ごとに売掛残高の大きい取引先を重点モニタリング。
    業界ニュース・帝国データバンクや東京商工リサーチの速報も随時チェック。
  2. 社内情報の活用
    営業担当が感じた「注文ペースの変化」 「担当者の交代」 「支払い条件変更の提案」など、現場の“生の情報”は財務データ以上に重要です。
  3. 取引条件の見直し
    兆候があれば、納品サイクル短縮・前金比率引き上げ・保証付取引などでリスクを分散。

A社が行った改善策

B社との取引損失後、A社は次の3点を導入しました。

  • 月次の取引先格付けレビュー
  • 営業部と経理部の情報共有会議を月1回開催
  • 「要注意先リスト」の作成と取引条件の自動見直しルール

この仕組み導入から1年、A社は複数の潜在的リスク案件を早期に発見し、未回収ゼロを維持しています。

最後に

企業間取引は信頼が土台ですが、信頼と与信は別物です。
天気予報を見ずに遠出をする人はいないように、取引の“天気”を読むことは経営の必須スキル。

「売上の裏に、確実な回収あり」
これを合言葉に、ぜひ貴社でも与信管理の精度を高めてみてください。

ではまた次回お会いしましょう!