こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
今回は、私が訪れたあるご家庭での“家計再建の現場”をお話ししましょう。
タイトルの通り、「口座はたくさんあるのに、なぜか貯金は増えない」というケースです。
「なんとなくやってきた」が積み重なると
相談に来られたのは50代のご夫婦。
長年の共働きで、生活は決して苦しくはない。
なのに、いざという時の蓄えは100万円に満たない。
理由を探るべくヒアリングをすると――
- 夫婦合わせて銀行口座は9つ
- 給与振込・光熱費引き落とし・カード引き落としが全部別口座
- 定期預金はバラバラで、満期も気づかず放置
つまり、家計全体が「どこにお金があるか分からない」状態だったのです。
最初にやったこと──「家計の地図を作る」
私はまず、全口座の入出金明細を3か月分並べてもらいました。
そこに色ペンで用途を分類――給与口、支払口、貯蓄口。
すると、驚きの事実が浮かび上がります。
- 給与口座に“使い残し”が毎月数千円単位で眠っている
- 同じ光熱費が2回引き落とされている月がある
- 定期預金の利息は、年間数百円しかついていない
まさに「資金が点在しているだけ」の状態。
導入した仕組み──「3口座ルール」
そこで提案したのは、家計の3口座化。
- 生活口座:給与振込と固定費引き落とし専用
- 貯蓄口座:手を付けない、未来のための口座
- 自由口座:食費・娯楽費など、使っていいお金だけ入れる
さらに、給与が入ったら自動で貯蓄口座に移す“先取り貯蓄”を設定。
家庭の反応──「面倒くさい」が「面白い」に
導入直後は、奥さまが「振り分け作業が面倒」とぼやいていました。
しかし2か月後には、通帳の残高がはっきり見えるようになり、夫婦で「今月は貯蓄口座が増えた!」とちょっとしたイベントに。
半年後、貯蓄額は3倍に増加。
ご主人は「お金の“住所”が決まったから、探すストレスがなくなった」と笑っていました。
最後に
家計の管理は、難しいテクニックよりもシンプルな仕組みが長続きします。
お金の“住所不定”は、貯蓄の天敵。
まずは家計の地図を作り、全員が見える形にすることが第一歩です。
次回は「ポイント還元の落とし穴」をお届け予定。
またお会いしましょう。