【山頂までの信頼ロープ】登山仲間の貸し借りから学ぶ与信管理

2025年8月13日

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芹沢慎一

こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。

私は山歩きが趣味で、週末には登山仲間と近郊の山へ出かけます。
山道を登っていると、仕事でも日常でも共通する“あるルール”をよく感じるんです。
それは――「信頼は道具と同じく、手入れが必要」ということ。

今日は、山頂を目指す途中に起きた“貸し借り事件”から、企業の与信管理の話をしましょう。

山道での「ちょっと貸してくれない?」

ある夏の登山で、仲間の一人が中腹あたりで声をかけてきました。

「悪い、飲み水を切らしちゃった。少し分けてくれない?」

もちろんその場では迷わず差し出します。
しかしその日は猛暑で、私の水も残りわずか。
この貸し借りが山頂までの行程に響きそうになりました。

貸し借りの“残量”を見極める

企業の与信も同じです。
「長い付き合いだから」 「一度くらい大丈夫だろう」と思って信用を貸す(=猶予する)ことは多いですが、手元資源(キャッシュ)の残量を冷静に見極めないと、自分の足元が危うくなります。

登山で水がゼロになれば命に関わるように、企業で現金が尽きれば活動は停止します。
ですから、次のようなチェックは必須です。

  • 今貸している(売掛金)の総量は?
  • そのうち「返ってくる時期」が確定していない分はどれだけ?
  • 貸した相手が返せない場合、自分はどこまで耐えられるか?

山頂まで持たせるための工夫

貸し借りそのものが悪いわけではありません。
ただ、登山でもビジネスでも「貸すときのルール」を事前に決めておくと安全です。

  1. 予備を持つ:キャッシュの予備=緊急用資金を確保。
  2. 返済ポイントを決める:登山なら“山小屋までに返す”、企業なら“支払期限を契約で明記”。
  3. 依存度を下げる:特定の仲間(取引先)への貸しが集中しないよう分散。

信用はロープのように

登山では仲間同士をロープで結ぶことがあります。
これは落下防止だけでなく、相手を信頼している証です。
しかし、そのロープが相手の不注意で切れたら――自分も危険に巻き込まれます。

企業の信用リスクも同じ。
どれだけ関係が長くても、「もし切れたら?」という想定をしておくことが、生き残るための安全策です。

最後に

登山仲間への貸し借りは、その場では助け合いでも、残量管理を怠ると共倒れになります。
企業経営でも、情や慣れで貸し続けるのではなく、「自分も山頂まで無事たどり着けるか」という視点を忘れずに。

では今回はこの辺で!ここまで読んでくださった方に心からの感謝を。