こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
週末、家族と温泉街を歩くのは、私にとって小さな贅沢です。
石畳の坂道、湯けむりの向こうに見えるのれん、そして漂う温泉卵の香り――この穏やかな空気の中でさえ、私はつい「お金の流れ」を考えてしまいます。
そう、職業病ですね。
今日は、そんな温泉街で出会った商店街の話を、企業の与信管理に置き換えてお話ししましょう。
閑散期の「あとで払うよ」
ある年の初春、常連の温泉街を訪れたときのこと。
顔なじみの土産物屋のご主人が、店先で少し困った表情をしていました。
「ここのところ、宿からのツケ払いが増えてね。観光客は減ってるし、支払いは次の繁忙期に、って言われてるんだ」
観光業において、繁忙期と閑散期の波は避けられません。
しかし「あとで払うよ」が積み重なると、手元資金はあっという間に冷え込んでしまいます。
しかも温泉街の商店街は、互いに取引や仕入れでつながっているため、ひとつの遅延が連鎖的に広がるリスクがあるのです。
湯加減はこまめに測る
お風呂に入る前に湯加減を確かめるように、資金繰りもこまめに温度(状態)をチェックする必要があります。
私は商店街の会合で、こんな質問を投げかけました。
- ツケ払い(売掛金)の残高はいくらか?
- そのうち、支払期限を過ぎた分は何%か?
- 閑散期に備えて現金の確保策を持っているか?
- 一社(または一宿)に依存しすぎていないか?
紙に書き出してみると、皆さん「うちは思ったよりお湯(キャッシュ)がぬるかった…」と苦笑い。
やはり数字で見ると、感覚とは違う現実が浮かび上がります。
湯冷めしない資金繰りの工夫
会合の後、足湯に浸かりながら改善策を話し合いました。
- 分散取引:複数の宿や観光客ルートに販路を広げ、依存度を下げる。
- 入金期限の明文化:契約書や注文書に支払期日を明記し、繁忙期でも遅延しないルール作り。
- 閑散期の資金クッション:繁忙期の利益の一部を積立金として確保。
「湯加減は熱すぎても冷めすぎてもいけない」と同じで、資金繰りも極端は禁物。
じんわり温かさを保つためには、日々の管理が欠かせません。
信用リスクは“温泉街的”に広がる
都市部の企業間取引と違い、温泉街のような小規模経済圏では、信用リスクは静かに、しかし確実に広がります。
ある宿が支払いを遅らせると、それが取引先の仕入れや人件費に波及し、最終的に商店街全体が冷え込むことも。
これを放置すれば、まるで源泉の温度が下がってしまうように、活気が失われます。
最後に
温泉の湯守(ゆもり)は、毎日お湯の温度と水量を確認します。
経営者も同じく、自社の資金温度と流れを常に見守る必要があります。
「今はぬくぬく」でも、次の季節が必ず同じ温かさとは限らない――その前提で動くことが、長く湯けむりを絶やさない秘訣です。
では今回はこの辺で。
SNSでは #慎一のマネー講座 で、もっと具体的な資金繰り・与信管理の知恵を発信しています。
あなたの会社のお湯加減、今一度測ってみませんか?