【じわじわ蝕む罠】“昔からの付き合い”が会社を倒すとき

2025年8月13日

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芹沢慎一

こんにちは。
企業マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。

普段は全国の研修会場や企業の会議室で、「売上は利益ではない、そして利益は現金ではない」という話を繰り返しお伝えしています。
今日はその中でも、特に経営者や経理担当の方から相談の多いテーマ――取引先の信用リスクについて。

きっかけは、とある中小企業の社長さん

数か月前、研修後に50代の社長さんがこう話しかけてきました。

「長年付き合いのある取引先なんですが、最近支払いがちょっと遅れがちで…まあ、昔からの付き合いですし、大丈夫でしょう」

はい、これ、非常に危険なサインです。

未回収債権は“会社の未来”を切り売りする

売掛金は「まだ手に入っていない現金」です。
相手が支払ってくれる前提で動いているので、見た目の売上は立っても、実際には現金が入っていない。
つまりこれは、企業の未来のキャッシュを前借りしている状態なんです。

1社だけならまだしも、2社3社と遅延が増えれば、将来の資金繰りは急速に細くなります。
しかも、倒産や夜逃げといった“突然の支払い不能”が起これば、その瞬間に未来の現金がごっそり消えます。

芹沢流チェックリスト:「今」ではなく「全体」で見る

私は企業研修で、必ずこんな質問をします。

  • 売掛金残高はいくらか?(得意先別・月齢別に把握しているか)
  • その中で、支払遅延がある取引先は何社か?
  • 遅延が3か月を超える案件の合計額は?
  • もしその分が回収不能になったら、今のキャッシュで何日持つか?

数字を並べてみると、「あれ?こんなにリスク抱えてたのか」と驚く経営者が多いです。
現場感覚では“なんとなく大丈夫”でも、数字は容赦なく現実を突きつけます。

信用リスクがクセになる心理トリック

人間は、「一度許した遅延」を次も許してしまいがちです。
しかも取引先との関係性が長いほど、“情”が判断を曇らせます。
結果、回収が遅れているのに新しい受注を出す――まさに“未回収債権の回転ドア”です。

私が現場で見てきた倒産事例の中には、「売上は右肩上がりだったのに、回収できない売掛金の山でキャッシュアウト」という会社が少なくありません。

最後に

与信管理は経理の仕事だけではありません。
営業も、経営陣も、会社全体で守る“企業の生命線”です。

「今は大丈夫そう」ではなく、「もし払われなかったら何が起こるか」を冷静に想定し、早めに手を打つこと。
それが、信用リスクと上手に付き合うための唯一のコツです。

では今回はこの辺で。
SNSでは  #慎一のマネー講座 で、もっと具体的な与信管理のヒントを発信しています。
未来のキャッシュを守るために、今日から一歩踏み出していきましょう。