こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
普段は全国を飛び回り、自治体や企業、学校で金融セミナーやリスク啓発講座を行っています。
テーマはいつも「お金との健全な付き合い方」。でも今日は海外の事例ではなく、もっと身近な――だけど案外おろそかにされやすい「お金を借りる前のワンクッション」についてお話ししましょう。
借金は「未来の自分」からの前借り
私はこれまで、消費者金融、銀行系信販会社、そして海外の金融コンサル現場と、さまざまな立場でお金と人との関わりを見てきました。
その経験をぎゅっと一言にまとめるなら――借金とは、未来の自分からお金を前借りすることです。
想像してみてください。
あなたが今日借りようとしているお金は、未来のあなたの財布から抜き取られて、時を超えて届くようなものです。
そして未来のあなたは、こうつぶやくかもしれません。
「え? いまの私、毎月の給料から必死に返済してるんですけど…」
もしその表情が険しくなったら、それはちょっと危険信号。
未来の自分を笑顔のまま保つ――それこそが大人の借金術なのです。
講座のポイント① 「借りてもいい状態」と「借りるべき状態」は違う
長年現場で働く中で、多くの人が陥る誤解を見てきました。
それは「返せるから借りてもいい」という考え方です。
確かに返済能力があるかどうかは重要な基準ですが、それだけで判断すると落とし穴があります。
私は、返せるのに借りないほうが圧倒的に幸福度が高かった、という事例を何度も目にしました。
理由はシンプルです。
借金がある生活は、どうしても「固定の出費」という足かせがつきます。
余裕が減ると、選択肢も減る。これは金額の大小にかかわらず起こります。
だから判断基準は「返せるか」ではなく「本当に必要か」。
これは国や文化が違っても、変わらない普遍的な大原則です。
講座のポイント② 借りる前に必ずやってほしい3つのこと
では、借りる前にどんな準備をすればいいのか。
私が講座で必ずお伝えしているのが、この3つのチェックです。
- 毎月の返済額は収入の20%以内に設定する
生活のゆとりは、予期せぬトラブルに対する保険です。
ゆとりゼロは、突風一つで山小屋に閉じ込められる登山と同じ。天候次第で一歩も動けなくなります。 - 契約書は3回読む(=三読ルール)
- 1回目:ざっと全体を
- 2回目:金利や返済回数などの条件を
- 3回目:遅延したときのペナルティを
この三読は、銀行員や審査担当者が習慣的に行っているプロの癖でもあります。
- 借りずに済む方法を一度は探す
クローゼットの奥で眠っている不用品を売る、外食やサブスクを一時的に削る――。
その一手間が、未来を変えることもあるのです。
後払いサービスの“便利の裏側”
最近は「あと払いペイ」や「翌月払い」など、審査が簡単で気軽に使えるサービスが急増しています。
アプリ一つで登録完了、数タップで支払いが先送り――確かに便利です。
しかし、その“手軽さ”が落とし穴になることも。
延滞を一度でもすれば、ポイント還元で得られる数百円と引き換えに、信用情報という目に見えない大きな資産を傷つけてしまうリスクがあります。
この信用情報、普段は意識しないかもしれませんが、住宅ローンや自動車ローンの審査に直結します。
長期的に見れば、ポイントより信用のほうがずっと価値のある「資産」なのです。
最後に
私が何千件という契約や相談の現場で感じたこと。
それは、お金の管理は計算式だけではなく、選択の積み重ねだということです。
「借りるか、借りないか」――その一つひとつの選択が、数年後の自分の自由度や笑顔の度合いを決めます。
だからこそ、借りる前にほんの数分でも構いません。
未来の自分と小さな会議を開いてください。
コーヒーでも飲みながら、「今借りても大丈夫か?」と、心の中で相談してみるのです。
きっと、そのわずかな時間が、数年後の安心や自由につながります。
それではまた。 #慎一のマネー講座 でもお会いしましょう。