【事例紹介】 「与信のルールがなかった現場に、羅針盤を置く」 国内メーカー営業部立て直しの舞台裏

2025年8月13日

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芹沢慎一

こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。

今回は、私が国内の中堅メーカーでお手伝いした、与信管理の改革についてお話しします。
舞台は北関東。取引先は全国に広がる食品パッケージ製造会社です。

「売れるのに、なぜかお金が残らない」

ある日、社長直々に呼び出されました。

「うちは受注も利益率も悪くない。なのに、資金繰りがいつもギリギリなんです」

調べてみると原因はシンプル。
売上の一部が“未回収”として宙に浮いている状態だったのです。

営業担当者は契約前の信用調査をほとんどせず、「以前も取引したから大丈夫だろう」と進めることもしばしば。
結果、支払いが遅れる顧客や、最悪の場合は倒産してしまう顧客も。

最初に着手したのは「見える化」

私はまず、過去18カ月分の売掛データを洗い出しました。
「どの顧客が何日遅れで入金しているか」 「回収不能になった金額はいくらか」を色分けした一覧表に。

これを壁に貼った瞬間、営業部の空気が変わりました。
なぜなら、“なんとなく”抱えていた不安が、数字として突きつけられたからです。

導入したのは「3段階の取引スタートライン」

ルールはシンプルに、そして現場がすぐ動けるようにしました。

  1. 事前審査の必須化
    登記簿、業界信用調査、支払い実績をチェック。
  2. 暫定枠での試運転
    新規顧客はまず少額・短期の契約から。
  3. 半年後の見直し
    支払いが安定していれば枠を拡大、不安があれば条件を厳格化。

さらに、営業担当が商談の場で5分で判断できる「与信クイックチェック表」も作成しました。

現場は最初こそ渋い顔、でも…

導入当初は、営業からこんな声が上がりました。

「せっかく受注できそうなのに、枠が小さいとチャンスを逃しませんか?」

しかし、半年後。未回収額は42%減少
営業も「回収業務に追われなくなって、本来の営業ができる」と笑顔になりました。

最後に

このプロジェクトを通じて改めて感じたのは、与信管理はブレーキではなく、長距離運転のためのシートベルトだということ。

売上は増えても、お金が手元に残らなければ、会社は前に進めません。
数字とルールで守られた土台があってこそ、安心してアクセルを踏める。

さて、ここまで付き合ってくれてありがとうございます。

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