こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
今回は、私が国内の老舗メーカーで手がけた「与信管理改革」の裏側をお話しします。
「昔からの取引だから大丈夫」…本当に?
きっかけは、地方に本社を構える金属加工メーカーからの相談でした。
「ここ数年、取引先の倒産や支払い遅延が増えて困っている」というのです。
詳しく話を聞くと、取引先の信用確認はほとんどなし。
「昔から付き合いがあるから大丈夫」という理由で、契約更新や与信枠の見直しは10年以上放置されていました。
しかし、経済環境の変化や業界再編で、かつて健全だった取引先も経営が悪化しているケースが増えていたのです。
最初にやったこと──「数字と事実で現状を見える化」
私はまず、過去3年分の売掛データと入金状況を洗い出しました。
支払いが遅れた取引先の共通点を探すと、半数以上が「直近1年で売上が急減」していることが判明。
つまり、業績悪化の兆候があったのに、現場では気づけていなかったのです。
導入した仕組み──「更新制の与信ルール」
そこで私は、以下の3つの仕組みを提案しました。
- 取引開始時の必須調査:帝国データバンクや商工リサーチの情報に加え、現地訪問や口コミも確認
- 年1回の与信更新:業績や支払い状況を踏まえ、枠を増減
- チェックリスト化:担当者が「取引継続OKかどうか」を5分で判断できるA4シート
さらに、既存の長期取引先も全件チェック対象にしました。
現場の反応──「面倒くさい」から「ありがたい」へ
制度導入直後は、営業部から「昔からの信頼関係が壊れるのでは」という声も。
しかし、半年後には延滞率が40%減少。
ある営業担当者はこう言いました。
「今は安心して新規開拓に集中できる。以前みたいに“回収に追われる日々”が減りました」
最後に
国内ビジネスは、人間関係や信頼で成り立つ部分が大きいですが、
“信頼”は確認と見直しの上にこそ育まれるものです。
与信管理は「取引を減らすため」ではなく、
「安心して未来を描くための安全装置」。
この改革をやり遂げた日の帰り道、
社長がふと漏らした「これで社員の顔を守れるよ」という言葉が忘れられません。
あの日の冬空は冷たかったけれど、その言葉が胸の中にじんわりと温かさを広げてくれました。
今もその温もりが、私の仕事の原動力になっています。
少し湿っぽくなってしまったでしょうか(笑)ここまで読んでくれた方に心からの感謝を。
それではまた!