こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
今回は、私がシンガポールに駐在していたときに手がけた、
海外企業の与信管理体制づくりの裏話をお届けします。
「現場に与信ルールがない!?」から始まった物語
ある日、現地のペイメント業者からこんな相談が舞い込みました。
「新規取引先の審査がザル状態で、回収トラブルが増えてきたんです…」
話を聞くと、取引先の信用調査は担当者の“勘”頼み。
契約書もテンプレがバラバラ、与信枠の基準もなし。
これでは、嵐が来たらあっという間に船が沈みます。
最初にやったこと──「見える化」
まず私が手をつけたのは、過去2年分の取引履歴の洗い出し。
どの顧客で延滞が発生しているか、なぜ回収できなかったか、細かく分類しました。
すると、延滞の約6割が「新規取引から半年以内」に集中していることが判明。
この時点で、問題の根は“入口管理”にあると確信しました。
導入した仕組み──「3段階の与信ステップ」
私はシンプルで実務に落とし込みやすい、3つのステップを提案しました。
- 事前調査:登記情報・財務データ・現地商工会での評判を必ず確認
- 暫定枠設定:新規はまず小さな取引枠からスタート
- 半年評価:支払い実績をもとに枠を見直す
これに加えて、担当者がすぐ判断できる「与信チェックリスト」も作成。
A4一枚で、OK/要注意/取引不可が分かるようにしました。
現場の反応──最初は渋々、半年後は笑顔
導入当初、営業担当者からはこんな声も。
「せっかく取れた契約が、審査で落ちるのは嫌だなぁ…」
しかし半年後、延滞率は35%減少。
「回収に追われる時間が減って、本来の営業活動に集中できるようになった」と、
現場から笑顔が戻ってきたのです。
教訓
海外ビジネスでは、文化や商習慣の違いからトラブルが起こりやすいもの。
だからこそ、“相手を信じる”前に“確認する”仕組みが不可欠です。
信頼は、ルールと実績の上にこそ成り立ちます。
最後に
今回のプロジェクトを通じて感じたのは、
「与信管理=取引を減らす」ではなく、
「安全に取引を増やすための安全装置」だということ。
南国の陽気な空気の中で、冷や汗をかきつつも完成させた与信体制は、
今も現地企業の礎として生きています。
次回は、国内企業向けの与信改革エピソードもご紹介予定です。
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