こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
今日は、私が最近担当した“ちょっと骨太な金融コンサル案件”の裏側をお話ししましょう。
登場するのは、ある地方都市で50年続く老舗の製造メーカー。モノづくりは天下一品、でもお金の回り方は…まあ、ちょっと昭和の香りが残っていた会社です。
依頼のきっかけは「社長の一言」
ある日、私のもとに電話が入りました。
受話器の向こうの声は、どこか困惑気味の社長。
「芹沢さん、うち、売上は悪くないんだけど…どうも資金繰りがカツカツでねぇ」
聞けば、取引先の支払いが遅れたり、貸倒れ寸前の案件が増えたりしているとのこと。
どうやら“売ってはいるけど回収が追いつかない”典型的な与信管理のほころびが原因のようです。
初日の現場調査
翌週、工場のある町へ直行。
応接室で社長と財務担当、営業部長が待っていました。机の上には分厚い請求書ファイル。私はそれを手に取り、静かに言いました。
「このファイル、半分は“お金になる予定だったけど、まだお金になっていない紙”ですね。」
一瞬、場が静まりました。
でも、事実は事実。現場にメスを入れるのが私の仕事です。
改善プラン:3つのステップ
私は会社の現状を踏まえて、シンプルな三本柱の改善策を提案しました。
- 与信チェック体制の見直し
新規取引の際、営業の“勘”だけに頼らず、信用調査レポートや登記簿、決算書を確認するルールを徹底。 - 売掛金モニタリングの強化
月次での債権回収状況を見える化し、“遅れ傾向”の取引先を早期発見。 - 回収交渉の即時化
支払い期日を過ぎたら即アプローチ。穏やかに、しかし毅然と。
営業部長との攻防戦
改善策を進める中、営業部長からこんな言葉が飛び出しました。
「いやぁ芹沢さん、そんなに厳しくしたら取引先が引いちゃいますよ」
私は笑って答えました。
「営業は“売る”だけじゃなく、“無事にお金を回収する”までが仕事です。取引先を選ぶのも立派な営業判断ですよ。」
この瞬間、部長の顔に「うっ」と書いてありました。
3か月後の成果
3か月後、再訪すると社長が開口一番こう言いました。
「いやぁ、だいぶ楽になったよ!資金繰り表の赤い数字が減った!」
実際、売掛金の回収遅延は半減。キャッシュフローも改善し、新たな設備投資の計画まで動き出していました。
信用はお金より重い
この案件で改めて実感したのは、
「信用はお金よりも重い」という事実です。
信用を軽んじれば、お金は逃げていく。でも、信用を守れば、将来の商機も資金も自然と集まってくる。
「お金を稼ぐ」よりも先に「お金を守る」こと。
これが、企業にとっての本当の成長戦略です。
#慎一のマネー講座 では、こんな現場のリアルな話も時々お届けしています。
もし「うちも心当たりが…」と思ったら、それは与信管理を見直すサインかもしれません。