こんにちは。
マネーリテラシー講師の芹沢慎一です。
今日は、ある営業現場で起きた“冷や汗もの”の一幕をご紹介します。
数字や理屈だけではない、現場のリアルな与信管理の話です。
契約書の判子は、あと5分待って
それは、セミナーの最中に起きました。
会場は、地方都市にある老舗製造会社の会議室。
営業担当の佐藤さん(仮名)が、ずっと落ち着かない様子でそわそわしています。
講義の途中、彼がこっそり耳打ちしてきました。
「実は…午後イチに新規のお客さんと契約するんです。でも、ちょっとだけ相手の会社がよくわからなくて…」
契約まで、あと3時間。
私は「じゃあ、今やってるワークを本番に使ってみましょう」と提案しました。
その場で始まった“即席信用診断”
ワークのテーマは「新規取引先の限度額と支払い条件を決める」。
佐藤さんはノートPCを開き、相手企業のHPや公開情報を確認します。
「売上はそこそこ…でも、ここ数年の利益率が低いな」
「社長の経歴は…あれ?業界経験が短い?」
数字だけでなく、人の情報も大事にするよう促すと、彼はこう言いました。
「そういえば、訪問した時もやけに急かされたんですよね」
見えてきた“赤信号”
セミナーの他の参加者も巻き込み、ちょっとした“現場会議”に。
経理部の女性が口を開きました。
「この会社、うちの取引先一覧に昔あった気がする…倒産した関連会社とつながってません?」
場が一瞬、静まり返りました。
調べると、確かに親会社が数年前に経営破綻していた事実が判明。
佐藤さんの顔色が変わります。
「…危なかった。条件を詰めずに契約してたら、後で泣いてたかも」
契約条件は“攻め”より“守り”で
午後、佐藤さんは契約の席につきました。
ただし、その手には「支払い条件と限度額を明記した契約書」。
相手の担当者は少し渋い顔をしましたが、最終的には条件を受け入れました。
後から佐藤さんが教えてくれたのは、こんな話です。
「条件をはっきり伝えたら、むしろ向こうも安心したみたいで。おかげで、社長にも“よくやった”って褒められました」
教訓:信用は現場で守られる
この出来事を通して、参加者全員が実感しました。
与信管理は「経理部の仕事」でも「営業の足かせ」でもない。現場で信用を守るための武器なのです。
佐藤さんは最後にこう言いました。
「今日のセミナー、まさか午後の契約に直結するとは思わなかったです」
私も心の中で、「それが本当の与信管理教育だよ」と笑いました。
最後に
数字と人の両方を見て判断する力は、机上の知識だけでは身につきません。
現場で使い、現場で守る。それが与信管理の本質です。
これからも私は、こうした“生きた事例”を通して、企業の安全な取引をサポートしていきます。
#慎一のマネー講座 では、こうした現場の知恵も発信していますので、ぜひチェックしてみてください。